なぜ他人の結婚発表を見ると心臓に負担がかかるのか

いつも応援してくださる皆様、関係者の方々へ

 

私事で大変恐縮ではございますが、

私、古川雄大は、かねてより交際していた

俳優の新垣結衣さんと星野源さんが入籍いたしましたことを

お昼のニュースで知りました。

お二人の末永い健康とご多幸をお祈りするものの、

私の心臓がかなり「うっ」「きゅっ」となったことを

ご報告させていただきます。

 

本当にどうしてなんだろう。

”逃げ恥”は未視聴だが、周囲では誰もが話題に上げていたこともあり、以前から見てみたいドラマの一つだった。

どんな気持ちでこれから視聴すればいいのだろう。

もっとドラマとして純粋に楽しめる時期に、なぜ俺は見逃したのか。

これから見るとなると「ふん、どうせこの二人、くっつくんだろ」という俺の一言が二重にも三重にも違う意味で反響してくるだろう。これは恐ろしい。

ごちそうさん』の時にはこうはならなかったぞ。

 

まあどうせ逃げ恥は見るのだけど。それはさておき。

どうしてこうもおめでたいニュースなのに、それを見る俺の心は締めつけられるのだろう。

別に新垣結衣が特段好きだった訳じゃない。昔からテレビで見ていたので、強いて言えば従姉のお姉さんくらいの距離を感じていた。だから、綺麗だな、と感じることはあっても、付き合いたいなーとか、どこの馬の骨とも知らない奴に奪われたくないなーとかは全く思わなかった。

 

じゃあ一方で、これが星野源の単独の結婚発表だったならどうだろう。世間では名も知られていない一般の方と結婚したのなら。

これもまた、新垣結衣の時よりは若干程度が落ちるだろうが、ある程度ショックを受けたはずだ。何だか予想が出来てしまう。

 

というか、これは別に芸能人とか結婚に限った話でもない気がする。

フリーかと思っていた友達が彼女持ちだったと知った時も同じ負担が心臓にかかるし、絶対独身のままかと思っていた叔父さんが結婚して子供が生まれた時も同じ感覚を味わった。なんなら、ナルトとヒナタが結婚した時もまあまあ「きゅっ」となった。

 

これは一体どういうことなんだ。彼女がいない自分と比較して生まれた嫉妬心なのか。それとも交際や結婚への羨望なのか。

あるいは、未来の人生の可能性を一つ失った悲しみなのかもしれない。

思い返せば、大学の健康診断の結果を見て、これ以上身長が伸びないと思い知った時も、同じ感覚を抱いたかもしれない。

公園で元気に遊ぶ子どもたちを見て、「昔はあんなに元気に、しかもこんなに狭い公園でも十分楽しく遊べていたのに」とふと思った時も、そうだったかもしれない。

「年取ってからスーパーカップが食べきれなくなった」と嘆くツイートがバズった時も、そうだった。

人は生まれながらにして、何十世代、何百世代という男女の組み合わせから生まれた奇跡であり、その上ありとあらゆる人生の選択肢を、これからの努力や機運でつかみ取ることが出来るものである。

無限の可能性の一つから生まれた人類の子は、また更に無限の可能性を秘めているのだ。

 

ただその可能性の数々は、時間が経過していくと共に失われていくものなのだ。そうやって様々な選択肢を、自分の意志のあるなしに関わらず選び続け、やがて一つの人生に収束していくのである。

もしかしたら、新垣結衣が俺と結婚する未来があったかもしれない。もしかしたら、星野源が俺と結婚する未来があったかもしれない。

でも俺はいつの間にか、そういう人生の選択肢を無意識にも選ばなかったのである。

 

だからちょっと悲しいのかなと考えてみる。

 

それに、結婚とは、人生の一部を他人に占領されるきっかけの一つである。

両親の元で許されていた自由や、家を出てから手にした自由というものは、家庭を持ってから同じように楽しむことは、もう出来ないだろう。

周囲から見ても、「あの人には家庭があるし、それを捨てることは出来ない」と思ってしまうし、事実そうだ。

結婚することで他人の人生を奪うと同時に自らの人生も奪われている、という自覚を持てないままの人もいるが、そういった人は世間で叩かれてしまう。

や、俺はもちろん結婚は幸せな人生を歩む上での選択として認めているし、実際憧れる気持ちもあるけど、他人とシェアする人生の窮屈さに耐えられる人間にならなければ、結婚なんて出来ないな、と感じてしまう。

話はそれたけど、要するに、新垣結衣はもう半分星野源のものみたいなものだし、星野源はもう半分新垣結衣みたいなものに見えてしまうから、かつて「みんなのもの」として受け止めていたお二人が、どこか遠くに行ってしまうようでちょっと寂しいということだ。そもそも「みんなのもの」と考えていたこと自体、捉え方の押し付けみたいになってしまったけれど。

 

このままだと結婚ってどうしようもないものだと俺は思い込んでしまうだろう。

せっかくだし、現代の結婚観について考えさせられると大評判の、あのドラマを見ようではないか。(1983字)

 

第1話 プロの独身男と秘密の契約結婚

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